臭右衛門:
ハアアアーーー
一嗅:
どうしたんですか臭右衛門さん。瘴気のような溜息ついて。(←鼻声)
臭右衛門:
あ、一嗅さん。拙者もうおしまいでござる……
一嗅:
アー、アー、南無三だー♪
臭右衛門:
(絶望に沈んだ眼差し)
一嗅:
まあ、話して御覧なさい。わたしでよければ相談に乗りますよ。
臭右衛門:
……はあ、実は拙者、しばしば上様の剣の相手を務めてござる。
昨日もいつものように上様と立ち会っていたのですが……
〜回想シーン〜
臭右衛門:
(上様に花を持たせなければ。一本とらせよう)せいっ!
上様:
そりゃ! バシーーン!!
臭右衛門:
ううっ、お見事。
上様:
うむ。ちと脇が甘いな。励め。
一嗅:
??? それがなにか?
臭右衛門:
もちろん何も問題はござらん。防御が甘いという意味のご指摘と、冷静になった今では想像でき申す。
しかし。
そ の と き の そ れ が し の 耳 に は
ワ キ ガ
と し か 聞 こ え な か っ た の で す 。
一嗅:
はあ?
臭右衛門:
立会いの最中に臭いを気取られたのではないか。
もう二度と剣の相手を命じられることがないのではないか。
いやそれどころかお側から遠ざけられるのではないかと、もう心が張り裂けんばかりでござる。
一嗅:
そんなことはないでしょう。
臭右衛門:
いや、わかっているのでござる。それがしが他の御家人からどのように思われているか。
「臭右衛門のアレは反則だ」
「見えない武器を持っている」
「剣で負けたのではない。臭いにやられたのだ」
上様もワキガ侍を傍に置きたいとは思うまい。ああ、思うまい!
一嗅:
そもさん!
臭右衛門:
せっぱ。何ですか突然。
一嗅:
汝に問う!
毒をもつ動物は、自分の毒にはやられない。このことをいかが心得る。
臭右衛門:
毒を持つ動物は自分の毒に耐性ができる?
一嗅:
その通り!
臭群様は征夷体臭群に任ぜられるほどのお方。
臭右衛門さんのワキガなんか気にもしていません。
臭右衛門さんも臭群様の臭いに気づいていなかったんでしょう?
臭右衛門:
なんと!
一嗅:
ワキガがどうしても気になるなら治療することもできます。臭群様に進言して一緒に始めてはいかがでしょう。
臭右衛門:
一嗅さん! 拙者、拙者、やります!!

※そもさん・せっぱ・・・
禅問答の前振りの言葉。「そもさん」と持ちかけ、「せっぱ」と応じることで問答が始まる